担当した研究テーマや、使ってきた実験手法なら書ける。
一方、自分の強みをどの経験で説明すればよいか、迷うこともあります。
まずは、一つの研究で自分が何を担当し、何を考えて進めたかを書き出してみてください。
チームの成果と自分の担当を分けると、研究内容と自分の経験を結びつけて説明できます。
この記事では、企業の研究職へ中途応募する方に向けて、職務経歴書の構成、製薬・バイオ研究を想定した記入例、自己PRへのまとめ方を紹介します。
そのまま埋められる記入欄も用意しました。
博士学生の新卒応募などでは、まず応募先が指定する書類と書式を確認してください。
書き始める前に、求人票と提出書類を確認する
最初に、応募先の求人票と書類の案内を並べて見てみましょう。
確認するのは、求められる専門分野、担当する仕事、提出書類の指定です。
同じ研究経験でも、自分で実験を進める役割に応募するのか、テーマやチームをまとめる役割に応募するのかで、詳しく説明したい部分が変わります。
求人票に書かれた仕事と、自分が実際に担当した仕事の接点を探しておくと、書く順番を決めやすくなります。
JACリクルートメントの創薬研究職向けガイドでも、求人内容と経験・実績の対応を確認することが勧められています。[1]
応募書類を整理するときは、次のように役割を分けて考えると便利です。
実際の項目や分量は、応募先の指定を優先します。
| 書類 | この記事での整理の仕方 |
|---|---|
| 履歴書 | 学歴・職歴など、基本となる経歴を確認できるようにする |
| 職務経歴書 | どの仕事を、どの立場で、どこまで担当したかを伝える |
| 研究概要・業績一覧 | 求められた場合に、研究の背景・方法・成果や公開業績を詳しく説明する |
研究概要を別に求められているなら、職務経歴書では担当範囲や仕事の進め方が分かるようにし、研究の詳細は指定された資料で補います。
追加資料を出してよいか分からない場合は、応募窓口に確認しましょう。
研究職の職務経歴書の基本構成とフォーマット
指定書式がなければ、まずは以下の項目で材料を整理してみてください。
これは本記事で用意した記入用のたたき台です。
応募先の様式に合わせて、項目の順序や分量を調整して使えます。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 職務要約 | 専門分野、経験した仕事、主な担当範囲を短くまとめる |
| 職務経歴 | 在籍期間、所属、役職、雇用形態、担当業務を記す |
| 主な研究・プロジェクト | 目的、自分の担当、判断・工夫、結果を説明する |
| 経験した技術・業務 | 技術名に加え、自分が実施・検討・管理した範囲を示す |
| 公開業績・資格 | 関連する論文・発表・特許・資格等を、状態と役割が分かる形で記す |
| 自己PR | 応募先の仕事に関係する強みを、具体的な経験で支える |
コピーして埋めるための記入欄
以下をWordなどに貼り付け、角括弧の部分を自分の情報に置き換えてください。
研究が複数ある場合は、「主な研究・プロジェクト」の欄を必要に応じて追加します。
【作成日・氏名】
[年月日]現在/[氏名]【職務要約】
[専門分野]において、[期間]、[主な業務]を担当。
[実際に担当した工程・役割]の経験を有する。【職務経歴】
在籍期間:[年月〜年月]
所属・役職・雇用形態:[記入]
主な業務:[記入]【主な研究・プロジェクト】
期間・目的:[開示できる範囲で記入]
自分の担当:[自分が行った仕事と、他の担当者との分担]
判断・工夫:[何を確かめ、なぜその方法を選んだか]
結果:[確認できたこと、完成したもの、次の判断に使われた情報]
残った課題:[結果を誤解させないために必要な条件・未確認点]【経験した技術・業務】
[技術・業務名]:[使用した時期と、実施・条件検討・解析・管理などの担当範囲]【公開業績・資格】
[論文・発表・公開済み特許等の情報と自分の役割/資格名と取得時期]【自己PR】
[強み]を、[具体的な経験]で説明する。
応募先の[業務]と、どの点で接点があるかを添える。
職務要約は、ほかの欄を埋めたあとに書いても構いません。
先に経験を整理しておくと、冒頭に残すべき情報を選びやすくなります。
研究内容は、自分の担当と判断が分かるように書く
Dr.NAOの視点
私が他の人の研究経験を読む・聞くときは、実験手法や結果に加え、本人が何を考え、どう判断し、どのように取り組み、その結果からどう考察したかを重視しています。
「細胞培養、PCR、データ解析を担当」と書けば、経験した手法は伝わります。
ただ、それだけでは、決められた手順を実施したのか、条件を検討したのか、結果を受けて次の試験を提案したのかが分かりません。
技術名に、その技術を使って担当した仕事を添えてみてください。
たとえば、「指定条件で測定と集計を担当」「比較する条件を提案し、責任者の確認後に実施」と書くと、仕事の範囲が見えてきます。
実験手法・使用機器は、担当範囲まで添える
経験した技術を並べるときは、技術名の横に「どの工程を担当したか」「どこまで自分で判断したか」「いつ使っていたか」を添えます。
以下は書き分け方を示す架空の例です。
自分の経験に合う欄だけを使ってください。
| 技術・業務 | 担当範囲の書き方の例 | 自分の情報へ置き換える項目 |
|---|---|---|
| 細胞培養 | 既定の手順による培養・継代と実験記録を担当 | 細胞の種類を開示できる範囲/経験した期間 |
| qPCR | 測定と集計を担当し、条件比較の案を責任者に提案 | 前処理・測定・条件検討の分担/使用した時期 |
| データ解析 | 既定の方法で解析し、判断が必要なデータの扱いを責任者に確認 | 使用ソフト・解析方法/自分に任されていた判断 |
| チーム運営 | 担当者の進捗を集め、遅れている工程と調整案を会議で共有 | 対象人数・期間/計画・育成・評価のうち実際に担った範囲 |
久しく使っていない技術や、指導を受けながら実施した技術も、その時期と関わり方が伝わるように書きます。
製薬・バイオ研究を想定した説明例
以下は、書き方を説明するために作成した架空の例です。
実在する研究者や筆者の実績ではありません。
情報が少ない状態
細胞を用いた評価試験とデータ解析を担当しました。
担当した仕事を具体的にした状態
評価試験の対照群の値が実施日によってばらついていたため、過去の実験記録と測定データの照合を担当しました。
細胞の継代数、播種から測定までの時間、試薬ロットを整理し、次の試験でそろえる条件をチームに提案しました。
追加試験はチームで実施し、私は記録様式の更新とデータ集計を担当しました。
追加試験後も差が残ったため、確認できたことと、引き続き検討が必要な条件を分けて研究会議で共有しました。
この例からは、記録を照合する、比較条件を考える、提案する、結果と未確認点を整理する、という仕事が読み取れます。
一方、原因の特定や再現性の改善まで達成したとは書いていません。
どこまで行い、どこまで分かったかを揃えて書くことが、経験を過大にも過小にも伝えないための土台になります。
実際の書類では、求人との関係が深い部分を残して短くします。
論文や特許が少ないときは、仕事の前後を振り返る
「職務経歴書に書けるほどの成果がない」と感じたら、まず、担当した仕事の前後で何が変わったかを振り返ってみてください。
たとえば、次のような仕事です。
- 引継ぎで抜けやすかった項目を整理し、記録様式に加えた。
- 複数の評価方法を比較し、次に採用する方法を決めるための資料を作った。
- 検討が進まなかった条件を整理し、追加で確かめる事項をチームへ示した。
いずれも、実際に行ったことがある場合の材料です。
担当しただけの仕事を、改善を達成した実績へ言い換える必要はありません。
「提案した」「試した」「変更が採用された」「効果を確認した」は、それぞれ到達した段階が違います。
数字を使える場合は、何と何を、どの期間・条件で比べたのかを確かめてから記載します。
記録がない削減率や改善率を、見栄えのために作らないようにしましょう。
公開業績がある場合も、自分の立場が分かるようにします。
論文は筆頭著者・共著者などの区別、特許は公開情報と出願・登録の状態を確認して記載します。
応募先から全件の提出を求められた場合は、その指定に従ってください。
代表的な業績を本文に載せ、詳細を別の一覧へまとめる方法もあります。[1][2]
自己PRは、強みを一つの経験で説明する
自己PRは、「課題解決力」などの強みの名前から考えるより、応募先で活かせる経験を一つ選ぶと書きやすくなります。
先ほどの架空例を使うなら、次のようにまとめられます。
これも筆者の実体験ではなく、説明用の例文です。
私は、結果の違いを検討するときに、まず比較の前提を確かめることを大切にしています。
評価試験の値が実施日によってばらついた際には、実験記録を照合して条件の違いを整理し、次の試験でそろえる項目を提案しました。
記録様式の更新と追加試験の集計も担当し、確認できたことと未確認の点を分けて共有しました。
評価系の検討や試験データのレビューを行う仕事で、この経験を生かしたいと考えています。
最後の一文は、応募先で本当にその仕事が求められているかを確かめて調整します。
経験したことと、これから挑戦したいことも分けて書きましょう。
自己PRの具体例は、職務経歴欄の説明とつながっていると読み手が確かめやすくなります。
マイジョブ・カードの自己PR解説も参考にしながら、具体的な経験を根拠に、自分の言葉でまとめてみてください。[3]
書く材料が浮かばない場合は、note「研究経験を話しても、強みが伝わらない|専門外の相手に伝える4つの問い」で、一つの仕事を振り返れます。
整理した材料を、このページの「自分の担当」「判断・工夫」「結果」の欄へ戻してみてください。
未公開の研究は、開示できる範囲で仕事を伝える
製薬・バイオ研究では、化合物名、標的、共同研究先、未発表のデータなどを詳しく書けないことがあります。
まず、所属先の規定や契約で、外部へ出せる情報の範囲を確認してください。
名前を伏せても、領域・時期・数値の組み合わせで研究が特定される場合があります。
「匿名にすれば書ける」とは考えず、判断がつかない情報は、出してよいか確認してから使います。
説明できる範囲が限られるときは、自分が担当した工程、判断の手順、関係者との分担を整理してみましょう。
たとえば「公開可能な範囲で、評価方法の比較と試験計画の調整を説明する」といった伝え方を検討できます。
これも、その業務自体を開示してよいことが前提です。
共同成果では、研究全体の結果と、自分が行った仕事をそれぞれ書きます。
未公開の生データや社内資料を、そのまま応募書類へ添付しないようにしましょう。
提出前に、読み手が迷うところを確かめる
書き終えたら、内容を知らない人が読むつもりで、一度見直してみてください。
- 在籍期間、所属、役割が追えるか。
- 求人票で求められる経験に、どの記述が対応するか。
- チームの成果と、自分の担当範囲が区別できるか。
- 技術名や略語に、仕事の内容が分かる説明があるか。
- 数字、論文・特許の状態、業務の到達点を確認できるか。
- 開示範囲と、応募先の書式・ファイル形式の指定を守っているか。
研究職の職務経歴書で迷いやすいこと
職務経歴書と研究概要に、同じことを書いてもよい?
同じ研究を扱って構いません。
職務経歴書では自分の役割と仕事の経験を、研究概要では指定された研究内容の詳細を伝えるなど、書類ごとの役割を決めます。
どちらかだけを読んでも、何を担当した人なのかが分かるようにしておきましょう。
博士学生も、この記入欄を使える?
経験の整理には使えますが、提出書類は応募先の案内を優先してください。
新卒向けの研究概要やエントリーシートと、就業経験を説明する職務経歴書は、求められる項目が異なります。
学生としての研究期間を、企業等に雇用された職歴と混同しないように記載します。
枚数が増えたら、どうまとめればよい?
まず、指定枚数があるか確認します。
指定がなければ、求人と関係の深い経験を先に置き、似た説明をまとめます。
業績一覧や研究概要を別紙にする場合は、提出してよいかも確認してください。
枚数に収めるために、文字を小さくしすぎないことも大切です。
まず一つの研究経験を、記入欄に書いてみる
一つの研究について、自分の担当と、そのときの判断を書き出します。
結果・残った課題・応募先との接点を足し、提出前のチェック項目で見直してください。
書類の内容を相談したい場合は、研究職向け転職エージェント7サービスの比較も参考になります。
研究分野に合う相談先か、職務経歴書や研究概要をどこまで支援してもらえるかを確認してください。
参考資料
書式や書き方を検討する際に、以下の公開資料を参照しました。
本文の記入欄と架空例は、本記事用に作成したものです。
- JACリクルートメント:創薬研究職の職務経歴書サンプルと書き方
- リクルートダイレクトスカウト:【研究】職務経歴書の書き方と見本・テンプレートダウンロード
- マイジョブ・カード:職務経歴書における自己PR欄の必要性と書き方について
資料確認日:2026年9月28日